Aの野望

昔むかしあるところに…
昔話の常套句。
そして、幸せに暮らしましたさ。めでたしめでたし。
これがおとぎ話のお決まりだった。

必ず結ばれる男女、身分違い、王子さま、お姫様・・・・

おとぎ話のような出来事に近い話は現実の過去にも何度でも起きていたであろう。

ただそれが物語のようにハッピーエンドで終わったかどうかは難しいところである。

自分がこんなことを考えるのには訳がある。
自分には昔の記憶がある。昔といっても子どもの頃ではない。いわゆる前世の記憶だ。

おとぎ話でいう「白雪姫」が前世だった。
継母に毒を盛られるし、それを口にしたせいでしばらく昏睡という生死をさまようことになって色々と大変であったが最後には助けてくれた国の王子と結婚して暮らすことになった。
幸せだったかもしれない。
しかし、現実は幸せばかりではなかった。思い出すだけでも苦労する日々もあった。
やはりおとぎ話のようには全てはいかない。

おっと!感情がこもって話が逸れてしまったが、今世では叶えたいことがあった。
その目的ために今回の人生をささげるつもりで木陰からある人物を見つめていた。

そう!

今世で俺は「人魚姫」だったBを幸せにするんだ!

目の前に綺麗な顔立ちで高身長の彼がグランドを横切っていった。

そう、おとぎ話の登場人物だった彼女たちは生まれかわって性別が逆転していたのだ。

「白雪姫」であった俺もBも今では立派な15歳の高校生男子なのであった。

最初Bに出会ったのは高校の入学式。一目で「人魚姫」の生まれ変わりだと分かった。
そう感じる直感的なものがあった。


前世で一度彼女に助けられたことがあった。継母のドジで海に落とされて(たぶんわざとだっただろうが)溺れた時に彼女に助けてもらったのだ。そこからは俺自身も色々あって彼女に会えなかったが、しばらくして彼女が泡になって消えたことを耳にしたときは悲しかった。
だから、来世では彼女を幸せにしようと決心した。そのために同じ世界で生まれられますようにと祈ったのだ。それが叶い喜んだのもつかの間。

??彼女はそう俺と同じ男子高校生Bとして生まれ変わっていた!

現実にしばらく思考停止してしまったが。俺はすぐに意識を取り戻すことができた。


((王子の生まれ変わりと幸せカップルにしてゆくゆくは夫婦で幸せの家庭を…と未来予想図を俺の計画立てていたのに。これではどうなるんだ??))
(まあ待て。落ち着くんだ。俺も男に生まれわったし。そんなの些細なことだ。)

何にせよ。おれはBを今度こそ幸せにするのだ。

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